8th Round | |||||
伝説的なロックバンド、クイーンの結成から、その躍進、スターダムをのし上がり、音楽史に名を刻むまでのストーリーを、多彩な音楽と青春群像を交えて観せる。ライブハウスでの演奏から、バンドに興味を持った若者が集い、協力して、最強のメンバーが揃う。音楽は、バランスが重要であり、有名なバンドは、メンバーの実力が拮抗して、演奏した時に、見事な調和が取れていなければならない。メンバーが揃い、満を持したクイーンは、どんな栄光をたどるのであろうか。 音楽とは、メッセージ在りきであり、その楽曲に乗せられた言葉は、風に乗って世界中に拡散する。そして、多くの人々を魅了する。音楽には、決まりきったルーティンやシーズンは無い。ただ、常に音楽を生み続けて不定期に発表するアーティストと、ファンとの間での信頼関係があり、時間は懸かっても生み出される素晴らしい音楽は、最高のプレゼントであり、熱狂を巻き起こす。世界の中心に居る、とはそういう事であり、ジャンルを問わず、アートとしての音楽家の、如何に幸せで特権のある事かを思わせる。アートとは、本来的に、ルーティンを必要とせず、アーティストが自分のペースで生む事が許される。これは、アートの特権であり、そうした清潔な環境があるからこそ、良いものが生み出せるのである。 だから、音楽の最大の理解者であり、評論家というのは、その同業たる音楽家なのである。それを、批判する事は誰でも出来るが、本質を読み解き、どんな優れた才能が凝縮した珠玉の音楽であるか、といいう事、歴史の中でどういう位置づけをするか判断し、後進に活かす事は、同業者にしか出来ない。物語は一曲では終わらないのだ。それには、本質を読むがゆえに、対立や別離もあり、ファンや市井が自由に語る事と、音楽家同士が、批判し合う事は同質の評論ではない。音楽家には、同業だけが共有する知的なサロンがあり、その中で交わされる議論は、真摯なものであり、音楽の本質を分かち合う事によって、また新たな楽曲を生む事が出来る。そこには、感謝もあるが、才能によるシビアな評価もある。影響力がある事は、現役としては望むべく幸せな事なのだ。自分達が背負っている音楽の価値が、同業への評論には懸かっている。だが、語らう側は、最大限の恩恵を受け、それをまた、更なる後進に託す、という、皆の幸福と恩恵の大輪が生み出される。 音楽とは、多数のファンを生み出し、国境を越えたネットワークが出来る事から、公共のものだ。だが、公共とはエンターテイメントとは別次元にあり、公共を守ろうとすればするほど、物事はつまらなくなる。だから、音楽家の実力とは、社会の一員として公共を守りながら、その語らいの要素の中に、如何にして、私心を織り込む事が出来るか、という事にある。私心とは愛であり、友情であり、闘志であり、幸福の語らいにある。公共を語らいながら、私心を観せ、語らう事が出来る事は、人間の魅力でもある。ラブソングもそうであり、愛を語らう事は恥じらいではなく、公人としてのウィットであり、勇気ある才能である。 クイーンは、実力によって人気バンドとなり、その栄誉と権勢を手に入れたが、ボーカルのフレディの傲慢のように、成功者となってから、その功績を我が物として誇り、独占すれば、メンバー間の絆や信頼関係は粉々になる。どんなにスターダムの煌びやかさを知るにしても、友情や愛を忘れれば、還る場所を無くし、孤高のエゴイストとなる。如何に、メンバーと不仲であっても、音楽や作品で、ファンを始めとするステイクホルダーとの絆が生まれ、保たれる事はあるが、それでも、フレディの造反とは、自らを守る為のやむを得ぬ行動ではなく、自分のエゴと傲慢で、一方的にメンバーとの関係を破壊したものだ。権力闘争とは、その当事者が、自分の優位な立場を利用して、その場は勝った、と思われても、長期的に観れば、それまで自身が築いて来たものや、歴史を損なう事になり兼ねない。メンバーとは家族であり、最小単位の社会とは、人としての原点であり、還るべき場所なのだ。確かに、未熟なうちは家族に従い、未熟さを克服してから、それを捨てる、というのは、魅力が無い処か、悪徳ですらある。 スターダムと悪徳は、決して、共存し得ない。どちらかを選ばねばならないが、フレディが、自らの非に気付き、絆を回復した事は、メンバーによるフレディの我がままへの許しであり、本来、自らが進んで破壊した関係というのは、簡単には回復し得ない。怒りを簡単に露にしても、その意味はメンバーにすら分からない。だが、関係の破壊前のフレディの造反が、実力を背景としていたように、破壊後の和解も、彼だけがボーカルとしてクイーンの全てを演じる事が出来るから許された、に他ならない。魅力的なトリックスターに振り回されつつ、バンドは研鑽され、その実力を高めて行く。これも、青春期の対立が、甘酸っぱいものであり、濃厚な交流であるがゆえなのだ。
by lower_highlander
| 2018-11-24 22:00
| 映画
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